映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アンドレイ・ズビャギンツェフ 監督「父、帰る」2328本目

「ラブレス」も切ない切ない映画だった。日本にも悲しくて美しい映画を撮る監督はいるけど、子どもの切なさといったら…。この映画も、不愛想な兄弟が中心にいて、忘れられかけてた父が帰ってくる。「父帰る」というテーマは古今東西の小説や映画で語られてきたようですが、父の不在で示唆されるのは家庭が不安定で妻子が心細く暮らすこと、父が戻ってくることが示すのは男の身勝手さ、不安定をさらにかき乱すもの。戻ってきてその後ずっと幸せに暮らしましたとさ、というストーリーは朝ドラの主人公の夫が奇跡的に戦争から生還したあとくらいです。

この監督の特徴は、救いようのない悲しい事態にあっても、静けさや澄み切った感じが常に保たれてることかな。愚かなことをしでかした人間たちにも一分の魂というか・・・。監督から、というより、逝ってしまったものから残されたものへの愛がある。

でもやっぱり悲しいね、この映画。

父、帰る [DVD]

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