映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アルフレッド・ヒッチコック監督「下宿人」2318本目

1927年、ヒッチコック無声映画。おそらく全尺が残っていて普通に見られる最古の作品と思われます。

これは冒頭から殺人事件が連続して起こっていて、サスペンスの香りたっぷりです。ハートの抜型でクッキー記事を抜いて意中の女性にアピールするなんて、可愛い、というか、100年近く前からハートというのは「好き」を表す記号だったんだなぁ。

しかし犯人は「復讐鬼」と呼ばれてるんだけど、英語では「Avenger」だ。(あいつら正義の味方じゃなかったのか!)復讐はrevengeだと思ってましたよ。そのていどの英語力。。

この映画は、こんなに昔なのにヒッチコックらしさを感じられました。といっても、この頃は「犯人らしき人が誰も見てないところで悪い人っぽく笑う」みたいな、典型的な場面も多いです。

犯人らしき人がいた、と知った一般大衆がすごい勢いでそいつを追いかけて、袋叩きにしようとする場面が怖いです。ひとつ間違えれば「わらの犬」です。この辺とか、いかにも怪しそうな人を犯人と決めつけて追う警察とか、「いちばん怖いのは人間だ」というヒッチコックの深い洞察が現れてるなーと思うのです。なかなか面白かったです。(最後にもう一ひねり来るか?とつい思ってしまうのが現代人・・・)

下宿人 [DVD]

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