映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ショーン・ペン監督「イントゥ・ザ・ワイルド」2291本目

ショーン・ペンは俳優としてとても好きで、彼がどういう映画を作りたかったのか興味があった。冒頭のかんじ、私がインスタグラムでフォローしている欧米の冒険好きな人たちの写真みたいだ。びっくりするような絶景にいつも一人で挑んで、目が覚めるような写真を見せてくれる人たち。何もない、誰もいないところで心が爆発的に解き放たれて、ウオオオオ!って絶叫したくなるような。私の好きな、サバティカルとか取ってエンジニアとか弁護士みたいな専門業務の合間に秘境に出かける人たち。ショーン・ペンは私の好きな人だったんだ。

冒頭の映像を見ながら、誰にでも作ってみたい映画ってものがあるとしても、私が作りたいものなんてまったくイメージできないと思ってたけど、こういう映像なら作りたい、と思った。同じではないけど、何か通じるものがある。こういうゆったりとした語り、少しスローな映像、絶景。

壊れて乗り捨てられたバスの中の暮らし。私はキャンピング・カーに住みたいと思ってる。ショールームみたいな何もない家には住めないけど、必要最低限のものだけ持って、どこにでも行ける生活が理想。

旅で出会う人たちはみんな素敵クリスもヒッピーみたいな人たち、大人たちや若い人たち。 荒野は友達と行くところではなくて、一人で歩くところだけど、そこで知り合う人たちっていうのは自分にとっては、新しい世界の一部だ。

当然ワイルドな世界のなかでは、自分も野生の動物と同じように脆弱。悪い人に襲われなかったとしても、善意の熊に食べられることもあるし、蛇や虫や病気、植物の毒。寒暖、台風。この青年が準備が足りなかったと言えばその通りなんだけど、それまで胸が開かれるような経験ができたのは良かった。願わくば街に戻ってきて、荒野を知る男として自由なビジネスでもやってくれたら・・・。でも、クリスはもうあの場所で全部知ってしまった、世界っていうものを悟ってしまっていたから、もういいよって神様が声をかけてくれたのかも。悲しくないのに涙が出る・・・。

私が旅をする気持ちを映像にしたような映画でした。

イントゥ・ザ・ワイルド [DVD]

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