映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

長谷川和彦監督「青春の殺人者」2287本目

<ネタバレあり> 

1976年の作品。すごい時代の映画だなぁ。今はもう作れない。プロデュースしたのが「復讐するは我にあり」の今村昌平というのが、なるほどです。放送禁止用語バリバリってことより、17歳の全裸というのが今は無理。15歳のデビュー作から脱いでたって、原田美枝子の度胸はすごいなぁ。つってもパツンパツンに健康的で、子どもみたいな喋り方をしてますね。

水谷豊は、いまは澄ましかえって刑事の役をやったりしてるので、こういう無軌道な若者役は新鮮です。

江藤淳桃井かおりのほかに地井武男も映画仲間。内田良平と、母親役の市原悦子の濃い演技が気持ち悪くてすごいです。こういう演技がしたくて役者になったのかな。ストレスをうまく出せない私みたいな人間でも、お芝居をしていたらこんな風に発散できただろうか。

ゴダイゴの洋楽ふうの音楽は、映画の重さを少し軽くする効果がある。Single Yellow Center Lineって懐かしいなぁ。この映画のテーマ曲として売り出したんだろうか。こどもだったのでそこまで知らなかったけど。

成田闘争を取り締まる機動隊は「お前が親を殺そうとどうしようと、関係ない」と言う。

原作の中上健司「蛇淫」が出版された年にすぐに映画化されたんですね。実話が元になってるというけど、どこまでが事実なんだろう?救いのない話だけど、エネルギーのやり場がわからない若者が思いつめたら起こりかねない事だ。原作のほうの感想をググってみたら、どうやら実際の事件では息子が、父を殺したのは母だと言い張ったが認められなかったらしい。映画のラストは、スナックに火をつけたけど死にきれなかった男が通りがかりのトラックの荷台に乗って逃げていく場面で終わる。火の中から彼を救った少女は彼を見失っている。いつかつかまるんだろうな。でもひとときの平穏をトラックの上で味わっている。

こういうどうしようもない「青春」もある。答も救いもないけど、いい映画だったな、と思います。

青春の殺人者

青春の殺人者