映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マイク・リー 監督「家族の庭」2270本目

痛いお話。日本でも40代、50代の女性の数名に一人がメアリーになりうる。

ここまでしぶとく、ひとつの家庭に入り込もうとしないで、途中であきらめる人ならその倍はいる。トム&ジェリーの夫妻は、冷静なように見えても、50の同僚が30の息子に手を出そうとしているのを見て平気ではないわけで、そこを思いやれずにグイグイ押すのはかなり無理があります。

「私はもうババアだけど、あと30歳若かったらね~」みたいに自分を低く置ける人なら、逆に若い子とのロマンスもあったりするんじゃないかと思うけど、「私若く見られるのよ」は言っちゃダメなんだよね。

彼女は自分の欲しいものはイメージできるけど、自分を鏡で見ることができない。どんな若い男も、どんなイケメンも、そのうち皺くちゃになるし、そのうち太って病気にもなる。家族になるということは、それでも一緒にいて助け合うっていうことなのに。

メアリーも、母の死を受け入れられず暴れるカールも、生きるのが下手で、人を思いやるという部分が壊れてる人たちだ。人として大事な部分がきちんと整ってるトム&ジェリーだけが良くてほかはダメだから去れ、というのもちょっと寂しいですね。ジェリーはカウンセラーをしているから、どこからか度を越してしまったメアリーの欠落に、プロフェッショナルに対応するしかないと気付く。

メアリーって、日本のホームドラマだと「空気が読めないけど親切な人」っていう、もう少しいいキャラクターになりそうだけど、たぶんイギリスではトム&ジェリーの反応のほうが素直なんだろうな。日本でも、団地のお隣さんどうしとかが舞台だと、この映画と同じ形になるかもしれない。

ケイティ(息子のガールフレンド)はユーモアがあって気が利くという設定だけど、そういうのも日本の私たちにはそれほどピンと来ないので、この「空気」についての映画が「そうそう、あるある」という反応はできない。

これって、自分を捨てようとしている男に食い下がる女にも応用できる話なんだろうな。ていうかメアリー、やばいなこの空気、と気づいたらすぐに帰れよ!共感してしまう部分もあるからこそ、早く自分を救ってほしいと思う。 

ちなみにメアリーを演じてるレスリー・マンヴィルは、「ファントム・スレッド」では仕立て屋レイノルズの右腕のやり手マネージャーを演じた人で、この振れ幅はすごい。ゲイリー・オールドマンがまだシド・ヴィシャス役とかやってた頃の妻でもあります。この演技力、ロマン・ポランスキーの今の妻エマニュエル・セニエともいい勝負だなぁ。これくらい自信や実力がある人じゃないと、こんな振り切れた痛い演技もできないのかもな・・・。

家族の庭 (字幕版)

家族の庭 (字幕版)