映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クエンティン・タランティーノ監督「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」2260本目

<ネタバレあり。まだ見てない人は読んじゃダメです>

いやー面白かったー。

やっぱり、面白い映画を見つけては誰よりも面白がってきた人の作る映画は面白い。

これは「君の名は。」みたいに、あの事件を生きなおして、ポランスキー監督の痛みを昇華させるためにタランティーノ監督が捧げた映画かしら、と思う。愛妻の美しく可愛いく幸せな姿を、マーゴット・ロビーが成り代わって見せてあげた。だから、パルムドールとはちょっと違うけど、並み居る映画人たちがスタンディング・オベーションをするわけだ。

キャスティングは、元々そっくりというわけではなく「雰囲気似」くらいの役者さんたちなのに、彼ら自身に見える。ボヘミアン・ラプソディでもこういうキャスティングをしてくれたらよかったんだが・・・。

チャールズ・マンソンが標的を間違えたという話は聞いてたけど、実際お隣を狙おうとしたのかと思いながら見てた。お隣=映画の主役の二人、落ち目の西部劇俳優とそのスタントマンというブラピとディカプリオ。まあこれだけ演技ができて華がある二人をこれだけ乗せて使えれば、映画がつまらなくなるはずもないんだけど、それにしてもこの映画には救いがあった。ディカプリオは泣く役も多いけど、この映画はかなり号泣しがちでしたね。

マーゴット・ロビーは、「アイ、トーニャ」では美人女優というより個性派、演技派と思ってたけど、この映画ではモデルみたいな大変な美人で可愛い女性です。この人すごい。

ヒッピー・コミューンの老人はローラ・ダーンのパパで、キュートで尻軽なプッシー・キャットを演じてるマーガレット・クアリーは、「恋はデジャヴ」のアンディ・マクダウェルの娘だ。事件に巻き込まれて早口のイタリア語で抗議しまくるのが超おかしかったイタリア女優は、タランティーノ監督の妻なんだ!

ブルース・リーもじつに可笑しく登場してたけど、これは監督の創作?同時代の人だっけ?と思ったら、本当にシャロン・テートと接点があったのね。「グリーン・ホーネット」のケイトー(加藤)役について触れるあたりマニアック。わかりやすさを追求するならドラゴンものでいいのに。

劇中映画でディカプリオに拉致される、あの賢い美少女は誰?ジュリア・バターズっていうのね。あの子ヤバいです。ナタリー・ポートマンばりです。誇り高くて清潔なところが素敵。楽しみですね。

など、下世話な役者チェックでもさらに楽しめる作品。パルムドールを取らなくてもいいんです、タランティーノ作品は。文学賞でいえば芥川賞より直木賞。徹底してどっかんどっかん盛り上げるエンタメの世界を追求していってほしいです。