映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アルフレッド・ヒッチコック監督「殺人!」2240本目

1930年、ヒッチコック英国時代の作品。画質は悪いけど、見ごたえがありますね。

陪審員の中に最後まで一人だけ意見が違う人がいるという状況は「十二人の怒れる男」を思い出します(あっちのがずっと新しい1954年)ほかの12人が声を合わせるところなど舞台っぽいし、上演中に舞台そでで警察に話をするのとか、判決が下されるのを陪審員控室で音だけ流す演出とか独特で実験的。探偵役の「サー・ジョン」を演じるハーバート・マーシャル、品のある英国的二枚目です。

<以下、ネタバレあり>

女装の空中ブランコ芸人、メイクした顔は十分ドラアグ・クイーンができそうなんだけど、ちょっとおなかポッコリなので、矯正下着でもっと女性に見えるようになれば、さらに印象的な映像ができたんじゃないか…当時はそういうの一般的じゃなかったのかな。かなり明らかに疑われ、追い詰められた彼が、もしかしたら事故を装って飛び降りるか・・・と思ったら、もっと露骨なやりかたでしたね。露悪的ともいえそうな、ヒッチコックらしいやり口です。(黒澤明とか今村昌平とか、巨匠にはそういうインパクト重視なところがある)

全体的には犯人は誰?という探偵ミステリーなんだけど、観客に謎解きの楽しみを与える映画ではないようで、十分なヒントは与えられません。この辺が、楽しみたくて見ている欲深い現代の観客(私だ)には、びみょうにフラストレーションですね。

でも、作品としては、90年前の英国の舞台の裏側が見られてとても興味深い作品でした。