1932年のアメリカ映画。フランソワ・オゾン「婚約者の友人」のオリジナル版。これを見ると、オゾン監督がどれほどイジワルに原案をいじり倒したか、よくわかります。タイトルがネタバレだと思ったけど、この映画では “刑事コロンボ方式”で最初に殺害場面、そこから時系列に従って映画は進んでいきます。
筋は割とストレートで、彼女が彼を追ってきてひどい思いをするような場面など、もちろんありません。でも題材としてはなかなか挑戦的だし、先進的な感じさえします。
一見したところハッピーエンドに見えるけど、繊細すぎる男の苦悩は一生続くだろうな。このストーリーのままいったとしたら、彼は夏目漱石「こころ」の主人公のような最期を遂げるんじゃないか。これはオゾン版よりよほどむごい。
こういうときに女はわりあい現実重視で見たくないところに目をつぶれたりする、など、人間模様が興味深いです。