映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

サミュエル・フラー監督「東京暗黒街 竹の家」2221本目

こりゃまた珍品。日本の風景がやたらとエキゾチックで外国みたいに見えるのは、発色が派手すぎるからかも。Wikipediaによると”東京(浅草、月島、銀座など)、神奈川(横浜港、鎌倉など)、山梨で、43日間にわたりロケ撮影が行なわれた”そうなので、映画の中の、まるで日本じゃないような風景はほとんど日本だと思われます。道行く背中の曲がったおばあさんや、おかっぱ頭で丹前を着こんだ子供達とか見ると、確かに日本以外では撮れない映像ですね。和服でも洋服でも赤い晴れ着を着てる親子が多すぎるのがリアルじゃない印象だけど、この映画より十年以上後の私も、お気に入りの赤いコートを着て母とデパートに行った写真があるので、当時は赤い一張羅をみんな着こんでデパートにいそいそと出かけてたんだと思う。

早川雪洲はすっかりおっさんになっていて、日本語の方が英語より怪しいけど、アメリカ生まれじゃなくて21歳で渡米したそうな。何十年も日本語と全く接しない生活をしてるとこうなるのかな。山口淑子は英語が滑らかでびっくり。「シン・ゴジラ」の石原さとみより喋り慣れてる。中国で活躍した日本人と聞いてるけど、1951年からこの映画が撮られた1955年までイサム・ノグチ(!)と結婚してたそうなので、夫から英語を学んだんだろうか。ぱっと見、ハーフっぽい容貌も、外国では受け入れられやすかったのかな。(関係ないけど、早川雪洲の結婚した相手は川上音二郎(オッペケペ〜)がアメリカ公演で文無しになって置いて帰った姪っ子だという話も載ってるし、映画より面白い情報がWikipediaにはてんこ盛り)

ストーリーも演出も、まぁ一言でいうと”適当”で、エキゾチック風味だけが見所と行っても過言ではない。やっと英語がしゃべれるという設定の山口淑子アメリカ人客に「卵はスクランブル?目玉焼き?ああ、ポーチドエッグね」と言いながら、むしろを敷いただけの家の七輪でベーコンを焼いてるとか、もうこれはテルマエ・ロマエ並みのジャンピング時代背景で笑えます。

浅草ビル913号室の真珠店で、障子越しにギャングの影を撃つ映像が、ちょっとかっこよかったし、浅草のデパートの屋上からお客さん達を追い出して撃ち合いを始めるのも、今見るとなかなか面白い映像でした。