映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョン・キャメロン・ミッチェル 監督「ラビット・ホール」2201本目

ラビット・ホール、ウサギの穴。

この映画では、加害者となった少年が罪悪感を吐き出すように描きつづけたマンガのタイトルです。マンガの主人公はその穴を抜けて家族を探し出そうとします。映画では息子を失ったベッカ(ニコール・キッドマン)とハウイー(アーロン・エッカート)の夫婦が、それぞれのラビット・ホールで葛藤しながら、その先の道を見つけようとします。

妻は終始、感情的で少しヒステリックで、夫は愛情深く彼女を包みこもうとするのですが、そのたびに邪険にされて傷ついて行きます。二人とも少し壊れている。二人ともそれに気づかずに、まるで普段のように大きな裂け目の表面だけを撫でて均そうとしているけど、少しもうまく行きません。妻はなぜか加害者の少年に付きまとい、夫はセラピーグループで出会った女性とマリファナにふけったりする。

みんな少し壊れている。でも息子を失うほどの強烈なショックでなくても、人間はみんな一人残らず傷ついてるし、それをうまく修復できていない人の方が多い、とも思う。だからみんなこの映画を見て共感できる部分がある。

でもなぁ・・・この映画は、見る人に何かを強烈に伝えようとはしない映画なんですよね。淡々と進んで淡々と終わる。This is life、って感じ。ジョン・キャメロン・ミッチェル監督って、特徴がまだ掴めない。彼の作る映画がみんな「ヘドウィグ」や「パーティで」みたいなキッチュでカラフルな映画ってわけじゃないんだ。ニコール・キッドマンはどうしてこの映画を自らプロデュースまでしたかったのか。なぜ監督が彼なのか。わかるようで、まだやっぱりわからないのです・・・。

ラビット・ホール [DVD]

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