映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

黒沢清監督「旅のおわり世界のはじまり」2181本目

前田敦子ウズベキスタンをさまよって、「愛の讃歌」を歌いあげる映画を見てきた。こういう映画作っていいんだ。という不思議な気持ち。

日本のバラエティ番組の撮影隊は、誰もやる気がないし、レポーターの前田敦子は、プロ意識はあるけど、カメラが回ってないところではまるで世間知らずで肩肘張ってるだけのお嬢ちゃんだ。元トップアイドルだったはずだけど、退団後の映画は割とヨゴレっぽい役が多い。そういうのもこなすのが素敵!とファンが騒ぐ映画なのか、どうなのか?と疑いながら見てたんだけど、彼女の集中力は本当にすごいですね。ちょっとイタイ感じの、海外とか行って「私意外としっかりしてるんです」「現地のものとか全然平気です」とか言ってるくせにツアーの他の人たちに一番迷惑かける小娘、というよくいるキャラクターを、完全に自分の世界に入り込んで演じきっています。

そこまでこの役に実感があるから、この子に感情移入してしまうんですよ。そういえば私も20歳くらいのときは人見知りだったし、世間知らずのくせにプライドばっかり高くて、いろんな人たちに迷惑をかけたな・・・とか。こうやって失敗して傷ついて、死ぬほど心配して解放されて、今はすっかり世界中の誰とでもすぐに話せるオバさんになりました・・・というような成長を女性なら大概していくんだろうな。

消防士の彼氏のために死ぬほど心配したり、「愛の讃歌」など歌いきっちゃったりするという筋なら、普通それにリアリティを持たせるために素敵な愛の場面くらい挿入しそうなところを、しないのはこの映画が前田敦子劇場だからなのか。こんなエンピツみたいな痩せっぽちの小さい女の子(この映画の中ではそう見える、そう見せている)の映画で本当にいいのか。その辺が不思議です。

加瀬亮はなんの映画でも、ひょうひょうとそこにいて何かを感じ取っているような役が似合うし、柄本時生は彼がいないと映画としてまとまらない重要な役柄だけど、染谷将太はこの役は退屈だったんじゃないかな!もっと濃い役、次回はやらせてあげてください、ぜひ。