映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アニーシュ・チャガンティ 監督「search/サーチ」2160本目

よく作られてますね。前に飛行機の中で見かかったときは、ちょっとまどろっこしく感じた(ちゃんと見ていないと構成がつかめない)けど、家でじっくり見ると、PCの世界に入り込んだようで浸れます。

<ネタバレあり>

父の知らない娘の本当の姿・・・といわれるとTwin Peaksを思い出して不良だったのかしらと思ってしまったけど、毎日一人でランチを食べてる孤独な女の子だとわかって、なんとも切なくなります。みるみるやつれていくパパの顔を見てるのも、辛くなってきます。

何が何でもコンピュータのスクリーン上で完結させるために、刑事とテレビ電話でしか会話してないのはちょっと不自然だけど。(この不自然さがのちに・・・)家のPCがWindowsで娘のがMacという設定もありそうで、うまい。

ネットで娘の事件をググったら、適当な分析サイトや、車の写真、父親自身が犯人だという説まで見つかったりするのが、なかなか辛い。

疑わしい人のところへ押しかけている時に刑事から緊急電話がガンガン入る緊迫感も面白い。なんだか、「ネットで起こることが現実だと思えない」という奇妙さを映画にしたというメタ構造が、逆に現実のように思えてくるのが不思議。

しかし、USには自分の映像をただ流すだけのメディアや、お葬式のビデオを作ってくれたり撮影してくれたりするメディアも、多分ほんとうににあるんだろうな。

有名な俳優が出ているわけでもなく、空中撮影は多分ドローンだろうし、割と低予算な映画かなと思ったら、やっぱり1万ドル(1億円超えですが、アメリカ映画では多分すごく安い方)。これをこんなにスリリングに作るのは、なかなかの手腕だと思います。この形の映画で観客を再び驚かせることはできないけど、思い切りエンタメに走ることや、近未来のちょっと先を行くSF映画もできるかもしれない。面白いし、未来も楽しみになる佳作でした。

Search/サーチ  (字幕版)

Search/サーチ (字幕版)