映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

小津安二郎監督「早春」2138本目

昔ってプラットフォームのずいぶん端っこまで人が立ってたんだなぁ!そんな駅で「電車の仲間」(ご近所さんなんだろうけど)ができたり、岸恵子のあだ名が「目玉が大きくてちょいとズベ公だから、金魚」だなんて。ちょっとリアルには想像できない日常です。

そしてまさか?の不倫物だった。
小津作品って、見れば見るほど、一見抑揚のない演技の裏に、人間のドロドロしたものを忍ばせているのが見えてきて、「東京暮色」あたりから面白みが深まってきました。
池部良は一見普通っぽいけどちょっとダンディ。淡島千景は笑顔がきれいで優しい。岸恵子は、清楚なのに言われてみると確かに”ズベ公”に見えてくる。杉村春子は小津映画では常にこの役どころだよね。加藤大介に宮口精二、三井弘次も出てる(若い!明るい!軽い!)山村聰、なつかしい。浦辺粂子、比較的若いけどヤケに枯れてる(笑)。中北千枝子、なんかいいですよねこの人。存在感が音無美紀子にも似てて、「普通」を演じられる存在感。東野英治郎はバーのカウンターの隣に座った初老の男(といっても実年齢はまだ49歳!)・・・といった具合に、私としては「オールスター映画」と言っても過言ではない。

既婚男性を好きになって「何がいけないの」と開き直る独身女性。彼女を囲んで説教をする男たち・・・小津映画の女たちみたいに、男たちもなかなか意地悪です。本当はみんな羨ましいくせに。でも、影で噂したりしないところにまだ友情が感じられます。彼らのうち誰かが、金魚といい仲になったとしたら、なんだかんだで受け入れるだろうから。

三浦という友人の見舞いを口実に不倫する。三浦を本当に見舞いに行った翌朝に死んだと言われて、無表情。その葬式の、何ともこじんまりとした様子。

転勤していく彼を見送る”ズベ公”の目に涙。小津監督は、不倫しようが憎んでいようが無関心だろうが、家族という単位で人間をとらえます。それは目に見えない確固とした枠組。

韓国映画を見て「私たちも感情をもっと出した方がいい」って書いたけど、この映画の人たちの無表情は、感情を抑えてるのとは違う。人前で顔に出さないだけで、ちゃんと怒り、ちゃんと笑ってる。感情はしっかり感じながら、表に出すことを抑えてるだけ。盲従とか誰もしないし、浮気されたら黙って家を出る。一番まずいのは、「浮気されても愛してる」とか思って嫌な気持ちを飲み込んでしまうことだ、と思う。

家族・・・。嫌なら別れちゃえば、などと思ってしまう私には、何が何でも家族という枠にこだわり続けた小津監督の想いは、本当は全然わかってないのかもしれません・・・。

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