面白い。私、こういう謎ってそうとう好きです。失われた名曲たち、誰も知らないミュージシャン。
答が存在する謎にたどり着けない、目の前に透明な壁があって、その先が見えてるのに行けない、そんな謎。頭が子どもみたいに純粋な「?」でいっぱいになって、目がキラキラしてくる。
ロドリゲスという人物も謎だけど、南アフリカのあまりの遠さ。アルバムが100万枚売れても誰一人、彼を呼んでコンサートをさせようと思わないくらい、誰も彼を探しに行かないくらい、南アフリカの人たち自身がそこを地の果てだと思っている。(死んだというデマを流したのは、著作権料を払わずにCDを売ってた海賊版屋じゃないかと思う)英語を話す国だけど、英国からの距離はDown underと呼ばれてるオーストラリアよりも遠い。
対象が音楽ってのがまたロマンチックですよね。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」もよく似たテーマだけど、楽曲の素晴らしさがエピソードの感動を何倍にもしてくれます。
印税をもらい損ねたけど、ミュージシャンにとっては、知らないうちに自分の曲が遥か彼方のどこかの国の人たちを元気付けてたって事実はすごく大きなことなんじゃないかな。知らないうちに自分は神だった、というくらいのインパクト。
彼が「発見」されてからのことを、第三者のような立場の娘たちに語らせるのもよかった。この映画を日本で見る人たちは、誰も南アの興奮を知らないのに、だんだん映画に入り込んで、ステージで生きていて、意外とちゃんとカッコよく歌っている彼に見入ってしまう。これが映画ってもののマジックだ。
感想で彼の人柄を褒めてる人が多いけど、確かに神様みたいないい人だ。娘たちも素直でとても感じのいい人たち。彼は人前で歌っていないときの時間もきちんと生きてきて、ちゃんと幸せな人生を送ってると思う。
なんか泣けるんだよなぁこういう映画って。一人の美しい人生そのものだから。人間ってパッと見、どんな顔でどのくらいの大きさでどんな格好をしてるか、ってことくらいしかわからないけど、中にこんなにじわっとくる音楽が入ってる人がいる。見た目ではわからない。私の知らないすごい人が私の周りにもたくさんいるかもしれない、と思える。
それにしても南アフリカの辺境感は半端ないなぁ。去年行ったのに、通り一辺倒のツアーでは何も見えなかった。いつか長く滞在して、レコード屋に行ったり地元の人とロドリゲスの話をしてみたいな。。。