映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

スタンリー・キューブリック監督「シャイニング」2108本目

また見てしまった。初めて見たときは心底震え上がったけど、それから6年近くを経たいま、暗号文書を読み解くように、隅々まで見落とさないように見入っている私はさほど怖がっていません。シェリー・デュヴァルの表情や、のったりとした動きは、なんだか可笑しい。なぜこの人をキャスティングしたんだろう?ジャック・ニコルソンの表情も、飲み屋の隣の席の女の子にからんでるおじさんくらいしか怖くない。前半ではずっと、このホテルは拍子抜けするくらい明るい昼間の光に満ちているし、怖いのは実は音楽だけなんじゃないか。緊迫した場面は、実は最後の4分の1くらいなんですよね。

キューブリックってほんとうに不思議。「2001年」とかは冷徹に一切感情を込めずに描き切ってるのに、この映画には純粋な恐怖を描こうという意図が感じられない。笑わせようとしていないのに、笑える要素がたくさん仕込んであるのが、不思議。

そして今回は、「シャイニング」という不思議で美しい能力のことが光って見えます。邪悪なるものに魅入られてしまう人、決して侵せないダニー少年や黒人シェフの中の「光」。魅入られてしまったパパは、雪の中をあんなに走り回っても、どうして正気に戻ることがないのか・・・。

完璧主義のキューブリックがこの映画で描いた「完璧」は、謎めいたホテルの血塗られたロマン・・・なのかな。怖さがゴールではなかったのではないか。と、今は思えてきます。