映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

越川道夫監督「海辺の生と死」2082本目

音声が小さすぎる映画って、あまり好きになれない。この映画も室内の会話は普通の映画の倍、テレビ番組の3倍くらいまで上げないと言葉として聞けない。原作の特殊で神話的な場面を表現しようとしたのかもしれないけど、それならいっそ田中一村の絵みたいなアダンの樹でも無音で映してくれたらよかった。

この若い二人は黙っていすぎて、別れるために抱き合いはじめるのか、と、美しいような嫌な予感だけがある。その後調べたら、この原作や「死の棘」、島尾敏雄とミホのことが少しわかってきて、生き残るということの深刻さを考えてしまった。言い方は悪いけど、こんなに死ぬ気満々の人たちが死ねなくて、長生きするつもりだった人たちが気づいたらもう死んでいる。なんなんだ、この世界の理不尽さは?

「後日談」の部分のまったり感。まだ「死の棘」の予感など何もない。ただ、やっぱり、この映画を十分味わうには、この夫婦の著書を読み込んで、すでに世界に入り込んでいることが条件になってる気がするなぁ。私としては、映画は何も予備知識がない人でもグイグイ引き込んでくれると嬉しい。

満島ひかりってすごく好きなんだけど、島にいたときのミホはもっとあっけらかんとしてワガママな「不思議ちゃん」だったんじゃないかなという気がする。満島ひかりはエネルギッシュで健全なんだ。彼女に「歪み」はない。

永山絢斗も好きだな。とてもきれいなものを持ってる感じがする。彼はこの役にも違和感がありませんでした。

海辺の生と死

海辺の生と死