映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

家城巳代治 監督「異母兄弟」2067本目

1957年の作品だけど、もっと昔の映画に見える。三國連太郎演じる軍人が威張って澄まし返っている感じが、戦後の映画じゃないみたい。

このとき三國連太郎34歳、田中絹代48歳。このお年にして16歳の女中の役がそれなりに見えてしまう。一流の歌舞伎の女形みたいな演技力。高千穂ひづる、爽やかで可愛いですね。浅田真央のお姉さんの舞さんに似てません?

・・・と楽しい話はここまで。この映画は男が女中に手をつけて孕ませておいて、金銭的援助もせずにただ家に置いておいたら世間体が悪くなったので、形ばかりの結婚をする。前妻との子2人と、後妻とその子2人をあからさまに差別し、いじめ続けたという胸くそ悪いお話です。

結局、上の3人の息子は戦死。末の子が戻ってきて、老いさらばえた父にやっと反抗できる後妻だけど、それが何かの足しになるのか?末の子と仲良くなった気立てのいい若い女中との仲も引き裂いてしまう。ここまで来ると、彼女自身が差別を助長してるともいえる。耐え忍ぶことで自分の位置を必死で守ってきたひとりぼっちの女。今の時代の、たとえば帰国子女とかが見たら、なぜ田中絹代がこれほど耐え忍ぶのかが理解できないだろうな。「Mなの?」とか聞きそう。(そうなのかもしれないけど。)

「母さんだって悪いんだよ」(と三男が言う)「みんなあんた達のために辛抱してきたんだよ」

威張り散らすだけの夫は、自分と後妻が「同じ人間」だという意識を持つことはなかったんだろう。終戦後のアル中の夫の演技がまたうまい。まだ軍服を着たまま、何もせずに酒ばかり食らうおじいさんにしか見えない三國連太郎34歳・・・。最後はもう夫婦というより親の介護でもしているようです。

田中絹代って、耐え忍ぶのに慣れた日本の女を演じたら世界一だなぁ。でも、ただ黙って耐えるだけの姿って見ていて辛い。どんなに反撃を受けるとしても、言いたいことを言って散る方が、見ている者には救いがある。

音楽はパイプオルガンで、メキシコのカトリック教会の物語みたいに荘重。この音楽のせいで、映画が知らないアジアの国の大昔の映画のような感じもありました。

異母兄弟 [DVD]

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