映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ノラ・トゥーミー監督「The Breadwinner (生きのびるために)」1891本目

帰りのキャセイパシフィックの機内で見た4本目。
アイルランドのアニメーション会社の作品。原題「The Breadwinner」。
Kinenoteには登録がないけどWikipediaには邦題で項目があります。Netflixで配信されてるのね。
タリバン政権下のアフガニスタン首都カブールで、自分に文字を教えたことで父が投獄されてしまった娘と、女ばかりの彼女の家族のことを描いた、美しく悲しいアニメ映画です。

これ機内で最後まで見るの辛かったなぁ。あんまり可哀想で。
そこは女性が、大人になっても、男性を伴わずに外出できない世界。
主役のパラヴァナちゃんはまだ子供なのに、稼ぎ手(breadwinner)がいないので男の子の格好をして、同じく男装をした女友達と一緒に肉体労働で日々のパンを買って帰ります。
姉が親戚の妻として引き取ってもらえることになって、一家で引っ越そうとしますが、パラヴァナはお父さんを連れ出そうと、一生懸命稼いだお金を賄賂として持って何度も刑務所に通います。イスラム世界の男性が全員女性に冷酷な訳ではなくて、健気な彼女(あるいは彼)を助けようとしたり、お目こぼししようとしてくれる大人の男性もいます。それでも逃げ場がない彼女の心に、美しい物語が生まれます。その中で主役の少年は”悪い象の王様”と戦う。現実が辛さを増していくに連れて、想像の世界に浸ることが多くなるけど、力尽きた彼女にはもう続きが思いつかない。瀕死の父親を取り戻すことはできたけど、彼女たちは明日からどうやって生きていけばいいのか・・・。

辛い環境にいる子供が想像の世界に遊ぶ、って「パンズ・ラビリンス」とか他の作品でもあると思うけど、見てるこっちも本当に辛いです。極端なことをいうと、男尊女卑だろうが女尊男卑だろうが完全平等だろうが、平和でみんなが幸せならどんな世界でもいいんだけど、この映画で描かれる世界に出口があるようには思えません。実際のアフガニスタンでは、今は女性も学校に行けるようになったはずだけど、近くの国々ではこの映画と同じようなことや、もっと辛いことが日々起こっています。本当に、宗教って何のためにあるんだろう・・・。
世界の全部の国に行ってそこの人たちと語り合うことなんて私には無理だけど、もっと彼女たちのことを知りたい、触れ合いたい、と思います。