映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マーティン・ブレスト 監督「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」1871本目

若い頃ならともかく、やらしいおじさんとなったアル・パチーノが主役で、いきなり小僧に女の愛し方を語り始めるなんて、こりゃー困った映画だと冒頭から思うわけです。第一、タイトルが。これではロマンスかポルノ映画にしか見えないよ!

そんなやらしいオッサンのことを、姪は「口は悪いけどいい人よ」という。ほんとかなぁ?と思いながら見ているうちに、盲目なのに突っ張って、軍人のプライドをひとかけらも落とさず持ち続けて、空いばりし続ける彼がだんだん愛すべき人に思えてきます。こんなにしょうもないロクデナシなのに。会社にいくらでもいる見栄っ張りのおじさんたちと何も変わらないのに。

クリス・オドネルの、育ちの良さそうな(お金はないという設定だけど)真っ直ぐで素直な感じもいいですね。
やらしいおじさんが、彼にかかると面白いおじさんになる。彼の素直さに引っ張られて、おじさんも楽しむことを思い出し、正しいことを思い出し、生きることを思い出す。

こんなにいい映画だなんて、最初は誰も思わないだろうな〜。これではまるで「いまを生きる」だよ。
全校生徒の前で、校長先生に向かって、演説をして勝つためのやり方を知りたい。心構えを教えて欲しい。
これって誰でもやれることではなくて、道を踏み外したとはいえ大勢の兵隊を率いていた過去の経験がものを言ってるんだろうな。正しいことを正しいと言うのは難しくないけど、大観衆に拍手をさせるのは簡単じゃない。味方が大勢いないと勝ち負けではどうしようもないのが世の中ってもんだ。

という、気持ちのいい終わり方をするし、アル・パチーノは若い頃がよかったわ〜〜と思っている人ほど見た方がいい映画です。