映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウィリアム・A・グレアム 監督「ユニコーン・キラー」1869本目

1999年の作品。
ナオミ・ワッツが好きなので借りてみました。このときもう31歳か・・・。女子大生の場面から始まるけど、全然違和感ないな・・・。(ちなみにその女子大は東京の津田塾大学の姉妹校で創立者の津田梅子が留学したブリンマー大学w)

可愛いくて知的で清潔だけど、どこかまだつかみ所のない、個性のはっきりしない子って感じですね。
可愛い彼女の周りに、いつの時代だと言いたくなるような長髪+ヒゲのグルや、彼女の清潔さに惹かれる好感度高めの男が登場。ナチスの国旗を部屋に飾っている彼女の父親もヤバい。
ユニコーンはこのグルの家にあるガラスの像なので、タイトルはグルが殺されることを示唆しているのかな、あるいは彼自身がキラーなんだろうか、などと想像しながら見ます。

ナオミ・ワッツは演技が自然でうまい人なんだけど、この映画が彼女に求めたものはキレイで純粋であることだけで、まだ「マルホランド・ドライブ」で弾けた彼女の姿は全く見えてきません。好きなのでつい語ってしまうんだけど、人間には愛されたい人と愛したい人がいて、彼女はまるきり後者なんだと思う。マルホランド・ドライブでは、カミーラを愛しすぎて壊れていく姿が自分可愛さを全く感じさせない捨て身の彼女の取り組みがすごく好きなんだけど、この映画では、どんな男にも”愛される”可愛い女であることしか求められてないので、まだ本質的な魅力が花開かなかったんだなと思う。長く美しい髪がとても素敵なんだけど、やっぱり短いほうが彼女の表情、演技が伝わりやすいなぁ。

「マルホランド」を見てすぐこの映画を見ると、面白くないわけじゃないんだけど、ストーリーを考えて、場面をつないだという感じで、特別なものを産み出すために、身を削ったというほどの凄みはあまり感じません。

デイヴィッド・リンチ監督は「アートライフ」の中で、フィラデルフィアは不吉な街だとしきりに言ってたけど、この映画の舞台としてそういう背景情報?はムードアップに役立ちます。そしてリンチ監督はこの映画も見た上で彼女の起用を決めたのかな、と想像してみます。

ちなみにこの映画に出てくるグル「Ira Einhorn」って実在の人物なんだ。この映画の中では彼が真犯人なのかどうかわからないけど、wikipediaでは真犯人扱いだな。実はこの映画はサスペンス、ホラー、というよりドキュメンタリーだったという驚きの事実に気づいた頃にはこの映画はもう終わっていました・・・

ユニコーン・キラー [DVD]

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