映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルーシー・ウォーカー監督「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」1859本目

去年この前作がTV放送されたのを見て改めて大泣きして、にわかキューバ・マイブームに火がついてしまって年末にハバナまで行ってきた私なので、この映画も上映2日目に劇場に見に行きましたよ!

今回もハンカチを用意して大いに泣きました。でもいわゆる感動巨編っていう映画ではないです。
キューバの音楽やダンス、前作からこの作品までの間に逝ってしまったミュージシャンたちが好きで、この人たちと音楽に、彼らが行きているうちに会えたことに、いくらでも泣けてしまうのです。コンパイ・セグンドは本当に素敵だし、イブラヒム・フェレールオマーラ・ポルトゥオンド(※彼女はご存命です)の歌声は、天使か?聖人か?と思うほど崇高。

死ぬことは「テレビを消すようなものだ」と、若くして亡くなった友人が生前に言ってたけど、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの中の何人かは、映画が終わるように生き終えたんだよね。冒頭からずっと脇役を演じ続けて、最後に主役に躍り出てエンディングを迎えた。エンドロールで一番泣けるような映画。そういう彼らの人生に出会えたことが嬉しい。

キューバの音楽とダンスって、人間の中の喜怒哀楽にいちばん近い音楽とダンスなんじゃないかなーと思っています。限りある時間のなかの喜びを、満面の笑顔で楽しもうとしてる。バルバリート・トーレスが弾く「ラウー」って楽器の音もいいんですよね。2本ずつの12弦楽器で、金属的でどこかノスタルジックな音色。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ・バンド(って言っていいのかな)はもう世界ツアーには出ないらしいけど、キューバに行けばバルバリート・トーレスもエリアデス・オチョアも演奏を聞くことができます。遠くてなかなか行けないと思うけど、気持ちいい海風と冷たいモヒートと素晴らしい音楽と(本当に、街角でもカフェでもどんなミュージシャンも素晴らしい演奏でした)現地の人たちの明るさと優しさ、いろんなキューバの魅力を直接感じられる人がたくさんいるといいなと思います。