映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

白石和彌 監督「彼女がその名を知らない鳥たち」1807本目

けっきょく、十和子も陣治も、体の中に真っ暗な大きい空洞を抱えた人たちだったんだな。
イケメンクズの男たちもだけど。
埋めるための温もりが見つかったと思いたかったのかな。

お金も何もなくて、未来に明かりも何もなかったころの自分たちを思い出してみる。
思い出したくもなかったころを思い出してみる。
誰も刺せなかったし死ぬこともできなかったから今、こうやって普通におじさんやおばさんになってる。
激しい気持ちを持たなかったからじゃなくて、飛び出せなかったから。
みんなの体の中にある真っ暗な大きい空洞が、埋められた人もいるだろうし、埋めなくてもいいやと思った人もいるだろうし、そのまま真っ暗な人もいるだろう。

でもこの映画を心底ひとごとだと思ってた人は、自分たちのそういう頃のことや、自分の中の空洞のことを忘れてしまったんだと思う。

この映画は最初の方はみんなわざとらしい、よくない演技だなぁって感じたけど、それは「わざとらしい演技」を演じてたからなんだな。騙された。

というわけで、この監督の作品の中でこれが一番だなぁと思いました。