映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ピーター・ウェアー 監督「トゥルーマン・ショー」1782本目

面白かった。
映画が作られた1998年の少し前に日本では、「進ぬ!電波少年」という番組でなすびという芸人さんが、部屋を出ないまま懸賞だけで食べていくという番組をやってました。11ヶ月も部屋から一歩も出なかったんだって。人は誰かの生活を覗き見るのが本質的に好きなんだと思う。違法なことはしたくないし、できるだけ誰も傷つけたくないけど、できるものなら。

トゥルーマン・ショーも懸賞生活も、悪趣味以前の、人権侵害もはなはだしいと思うんだけど、最近も「テラスハウス」ってのが人気なんだって?これは一般の人たちが自発的に応募してドラマチックな生活を送ろうという番組なので、出てるほうと見てるほうは、いわば共犯。自分の生活をYouTubeとかで流してる人も、見られたい願望、見られることで自分の人生が輝く、という気持ちで流すのなら、需要と供給のいい関係なのかも。

この映画は人の「覗き見願望」を最大限にまで膨らませてユーモラスに描いていて、ジム・キャリーはまさに適任。他の誰が演じても悲壮感が出ちゃったんじゃないかな。

番組のプロデューサーが自分を神かなにかのように考えていて、トゥルーマンに空の上から話しかけるのが、薄気味悪くて秀逸。番組や映画の演出をやっていると、自分がその世界を操っているような錯覚に陥ることがあるのかもしれないけど、自覚して自重してほしいなぁ。視聴者なんて、番組がとつぜん終わったって「あっそ。じゃあ何見るかな」としか思わないんだから。

人間の性(さが)を描いていながら重くない、とても興味深い映画でした。