映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャック・ドゥミー 監督「ロシュフォールの恋人たち」1778本目

ミファソラ〜ミレ、レミファソッソッソッレド〜

1966年のフランス映画。
冒頭の筋肉質な男女の揃ったダンス、これって「ウエストサイド物語」(1961)のフランス版?
似てると思ったら本物のジョージ・チャキリスが出てるのか。フランス語しゃべれるの?(※吹き替えという情報あり)
ピンクと黄色のふたごの姉妹とか、これはヴォーグじゃなくてオリーブの世界でしょう。

デルフィーヌの恋人は「射撃絵画」なんかやってる。ニキ・ド・サンファルが1961年に始めたものらしいので、これもまた流行に乗っかった形。なかなかミーハーな映画だなぁ!

そしてダムさんを演じてるのは、若かりしスリムな頃のミシェル・ピコリ(当時41)じゃないですか。フランス映画ってそんなに見てないけど、カトリーヌ・ドヌーヴが出てる映画とミシェル・ピコリが出てる映画とイザベル・ユペールが出てる映画の3種類じゃないかと思うくらい彼もいつも出てる。(この映画ときたら3人中2人出てる!今の日本映画の役所広司樹木希林みたいだ)で若い頃のピコリってすごく油っこいんだよなぁ。どうやったらあんな風にうまく枯れていけるんだろう。

えっジーン・ケリーも出てるの?アメリカから俳優を連れてきてミュージカルをフランスで作ろうっていう趣向だったのか。オールキャスト、好きな人全部連れてきて出して映画撮っちゃおう!という。これがOKなら他の国でもバンバン作るといいと思うけど、そううまくは行かないのかな。

ひなぎく」とかと同じジャンルのビューティフルで夢みたいな映画で、屋外セットによるロケ撮影も完璧。
CMとかミュージックビデオならともかく、この長さのものを完璧に作るのって大変だろうなー。

<2回見た後の感想>
バラバラ殺人のエピソードだけが異質で、「いらないのでは」って書いてる人もいたけど、あえて挿入したこの違和感こそがテーマなのかもしれない。そのテーマとは”愛する人を求め続けること”。デュトルさんは40年ふられ続けた。ママとダムさんは10年。サランジュとアンディは数日間。マクサンスとデルフィーヌは出会わないうちから愛し合っていて、最後の最後にやっと出会える・・・というところで、あえてそのまま映画を終わらせる。監督はきっと夢みがちで辛い恋をしてきた人なんだろうな。

デュトルさんの事件、最初に新聞で見たときは怯えていたママが、デュトルさんだったと判明した途端にあっけらかんと「あらまあデュトルさんったら」と普通に戻る。猟奇殺人じゃなくて愛情が理由なら、急にシンパシーの対象になるのかな。自分に降りかかってこないから安心なのかな。

なんか、そんなことやフランソワーズ・ドルレアック がこの後すぐに亡くなったこととか考えてると、一瞬の楽園みたいでこの映画の美しさが切なくなってくるね〜。