映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ガス・ヴァン・サント 監督「エレファント」1769本目

アメリカのスクール・カーストを描いた群像劇かな?という風に始まる。
役者っぽくない少年少女たち、それぞれいろんなものを抱えてる。そういえば学校ってこんな感じだったよな。ドラマチックじゃないのが普通だった。華やかじゃない彼らに共感しながら、だけどガス・ヴァン・サントの映画だから何か悲しい予感がする。それぞれに何かを抱えてて、さあこれからこの中の誰が切れるんだろう、と探り始めてる。

初々しい、頬の柔らかそうな少年たちも、きれいに髪をスタイリングするようになった少女たちも、みんな未完成で頼りない。いい子も悪い子も、これから起こることを知らずにいつものように暮らしてる。これが実際なんだろうな。清々しいくらい、観客を操作しようという意図がない。
怖いのは、ゲームの中で兄弟がただ立っている人たちを次々に銃撃するのを見るとゾッとするのに、校内の銃撃が始まると心のどこかで、兄弟の方に共感している自分に気づくことだ。

金髪の大人びた少年、ジョン・ロビンソンは、涼しげな北欧っぽい容貌がいいですね。大人になったこの人の映画を見たことがあるかな?

それにしても、じわじわ胸に残るものが多い映画です。「銃はいけない」という教訓ではなくて、「明日は来るかもしれないし、来ないかもしれない」かなぁ。(それって教訓じゃないよね)いじめっ子の中にもいじめられっ子の中にも、殺された人がいる。いじめられても切れる子と切れなかった子がいる。因果応報はない。今日を懸命に、ではなく、今日を普通に生きよう。という仏教的な諦念なのかな・・・と思います。

エレファント デラックス版 [DVD]

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