ジェームズ・アイヴォリー 監督「上海の伯爵夫人」1743本目

2005年の作品。ジェームズ・アイヴォリーと言うと、「ハワーズ・エンド」「眺めのいい部屋」とかの美しき大英帝国の映画を撮る人ってイメージで、これもその一つかなと思ったんだけど、この作品の原作はカズオ・イシグロ。(日本生まれの日系人が、上海に日本軍が攻めてくる映画をイギリスで書くんだ!)
アメリカ人の盲目の主人公(レイフ・ファインズ)がひたすら思い続ける、亡命ロシア貴族の未亡人。雑多な人たちが集まってきて華やかな生活を繰り広げる上海で、ひそかに戦争の影をもたらす謎の日本人(真田広之)。

日の名残り」に比べると救いがあるんだけど、やっぱりかなり切ない。
そもそも二人とも、夫や妻や子供をなくしていて、町中に切なさが満ち溢れてる。ロシアは革命が起こって貴族が国外へ退避。伯爵夫人はクラブのホステスに”身をやつして”親戚や子供を養っているけど、親戚は彼女を汚れたもののようにみなす。元外交官の男は妻を亡くし、娘と二人で生きていこうとしていたときに攻撃を受ける。
カズオ・イシグロって人間のどこにどう惹かれてるんだろう。
当人には変えられない厳しい状況が必ずある。登場人物は真摯で純粋で、だけど内向的で大事な場面でも思い切れない。ひねくれもせず、変わりもせず、純粋に切なく、ただ思い続ける。・・・そういう人間を彼は美しいと感じて、愛のある視線で見続けてる・・・のかな。彼は物語を語りたいのではなくて、場面場面で際立つ彼らの純粋な姿を見せたいのかな、と思います。そこに普遍性があって、世界中の専門家からノーベル賞にふさわしいと推されるわけだよな・・・(感想)

映画としてはとても地味なんだけど、カズオ・イシグロ作品、あるいはジェームズ・アイヴォリー作品を続けて見ていく上では外せない作品だと思います。