映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

岸善幸監督「あゝ荒野」上下1720〜1721本目

菅田将暉とヤン・イクチュンでしょ?見なければ!と思ってるうちに終わってしまって、キネ旬3位に主演・助演男優賞ときけば胸も高鳴ります。

新宿シンジの安っぽい男っぷりもいいけど、とにかくヤン・イクチュンがいいよな〜。彼大好きなんだけど、ここまで弱気な演技をさせなくても良かったかもね。(42歳の彼が31歳の役ってすごい、見えなくないけど)
ユースケ・サンタマリアが、昔の底のない感じの明るさじゃなく一度あっち行って戻ってきた感じのちょっとヤバい元ボクサーになっていて、いきなりいい。高橋和也がとてつもなくイヤラシイ中年になってるのも泣けるし、「ヨシコ」を演じる木下あかりもいい。
薄幸で善良な女ばかり演じてきた木村多江のアバズレっぷりも美しい。モロ師岡もでんでんも、この映画ってキャスティングが絶妙ですよね。監督はよほどいろんな俳優と満遍なく仕事をしてきたのかなと思ったら、テレビマンユニオン所属で、各局でさまざまなドラマを作ってきた人だったんですね。

しかし・・・寺山修司が亡くなったときわずか47歳だったのが驚きだし、没後もう25年も経っていることも驚きだ。若い人はもう、よほどのマニアでも知らないだろうなぁ。原作が書かれたのは1966年、ということは前回の東京オリンピック直後だ。映画では2020年のオリンピック直後という設定。ドローンを使った自殺機械は、原作ではどういう機械だったんだろうな。でもそれほど大きく世界は変わってない気がする。

最後まで見終えて、これは・・・ジョーと力石の死闘だな(平成生まれの人にはわからないな)。
泣けたけど腹に力が入る映画だった。センチメンタルっていう感情じゃない。愛と憎は激しい反作用なのだ。この映画の中の世界にもしいたら、私なんかは体力ないので弾き出されちゃっただろうな。そういう高エネルギーのぶつかり合い。
これが一位じゃないなら、キネ旬一位はどんな名作だ!(※必ずしも自分の好みと順位は一致しないもんだ)