映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ミシェル・アザナヴィシウス 監督「グッバイ・ゴダール!」2038本目

ゴダールの二人目の妻だったアンヌ・ヴィアゼムスキーが書いた原作の映画化。

ゴダールの女性たちって素敵な人ばっかりだなぁ。最初の妻のアンナ・カリーナも三番目のアンヌ=マリー・ミエヴィルも、みな知的なクール・ビューティです。(ロジェ・ヴァディムの女性たちも違うテイストながら素晴らしいけど)しかしこの原作は「暴露本」のたぐいと取るべきだろうか。この当時のアンヌはまだ20歳前後で、18歳年上のゴダールのことを批判的な目で見たわけではなかっただろうな。若い頃に恋した人との世界、その人の変な癖や細々とした特徴を思い出したかったのかな、と思います。

ゴダールの方は、デモだろうが討論会だろうが、「君は僕の妻だろ」という一言であちこちに連れ回しては、ヤジの嵐の中で連れ出される。嫉妬深く独占欲が強い。革命かぶれで理屈屋で、手を動かして仕事をしている姿が見えてこない。それでも彼の映画は素晴らしい、と言えれば救いがあるんだけど「勝手にしやがれ」と「気狂いピエロ」を美しい異国の映画だなぁと遠くから見ただけで、ゴダールにシンパシーを感じたことがないので、正直なところ、不思議な人たちだな、自分と全く違う人たちって面白い、という感じしかありません。

ステイシー・マーティンは透明で知的で、とても正しくアンヌとして映画の中に存在しています。「ニンフォマニアックス」では私には見えてなかったけど、なかなかすごい女優さんなのかも。

面白いのは、普通は亡くなった大監督を、一時期結婚していた若い妻が回想するものだと思うけど、亡くなったのはアンヌのほうで、この映画で若干コケにされているゴダールは健在ってことです。原作も映画も、見たかどうかはわからないけど、どんな気持ちでいるんでしょうね。

グッバイ・ゴダール [DVD]

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