映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ピーター・ボグダノヴィッチ 監督「デイジー・ミラー」2021本目

ピーター・ボグダノヴィッチ 監督作品だけど、日本では未公開でソフト化もされてないようです。これは、だいぶ前に「BSプレミアムシネマ」で放送されたのを録画しといたやつ。見た人が少ない上に、おしなべて評価が低い・・・。

お高くとまった「上流階級」の人たちが普通のちょっと品のない人たちをバカにする映画、と書いてあります。

確かに主人公の弟は、ホテルの部屋の前に磨いてもらうために出してある靴を、片っ端から他の部屋のと入れ替えたり、誰かの杖を勝手に持ち出したりと、たいへんお行儀が悪い。デイジー・ミラー嬢はルノアールの絵みたいに美しい白いドレスの裾を引きずって砂の上を歩いていきます。

お高いほうの叔母さんと甥っ子は、全身黒シャツで温浴しながら、銀の食器でお茶をたしなんでる。浴槽のあっちではチェスにいそしむフランス人。・・・なかなか新鮮で笑ってしまいます。

いま気づいたんだけど、お高い叔母さんがデイジーのことを「ほら、男たらしなのよ」というとき、自分の想像の中の「ふしだらな娘」を語ってるんだな。その想像力が貧しいと、実態からかけ離れたものになる。しまいには、恐山のイタコさんをからかって「ジョン・レノン呼び出してください」とかって演じさせたら?みたいに本人と似ても似つかないものになっていくわけです。

それはさておき。シビル・シェパードといえば「ブルームーン探偵社」。闊達で知性溢れる役どころはこの映画とも通じます。このくらい早口のアメリカ人って、職場でよく見たな・・・話についていけなくて・・・。早口ってヨーロッパ的な上品とは遠いところにあるのね、きっと。相手役のバリー・ブラウンは八の字眉毛の独特な風貌。知的で優しいけど、どこか暗い。この映画の数年後に自殺してしまったらしいです。ちょっと切ない・・・。

この映画も最後はしんみりと終わります。若い頃に出会ってときめいた、奔放で綺麗な女性の儚いお話です。この「しんみり感」がボグダノヴィッチ監督の持ち味だと私は思っているので、「ラスト・ショー」とかと舞台はまるで違うけど、どこか共通するものも感じました。