映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

木下恵介監督「わが恋せし乙女」 2006本目

そうか、このタイトルは「私が愛した少女」という意味か。公開されたのは1946年10月、まさに戦争が終わってまもない日本だけど、この映画の舞台は、都会的な子どもたち、長じて男女が馬に乗ったり寝転んだりして、楽しく歌いあそぶ美しい山あいの風景。アルプスの少女ハイジとその兄、みたいな感じです。なんというリアリティのなさ。「少女趣味」という人もいるこのロマンチックさは、淀川長治が推す、リリアン・ギッシュが出てるような戦前のアメリカ映画みたいです。舞台のスイスっぽさ、酪農業のはずの美子が着ている銀座で買ったようなワンピース、兄の純粋で忍耐強すぎる愛情・・・。監督が一番この映画のなかで心惹かれたものはなんだったんだろう。思い切り不自然な美子お嬢さんの無邪気さ、ではないですね。戦場での5年間を、ひたすら美子との結婚を夢みて耐え忍んできた兄の、これからもさらに耐え忍ばなければならない彼の思いの美しさ、かな。端正で真面目で知的な原保美が、監督好みの男優なのかな。美子が恋する脚の悪い男を演じている増田順司も、似たタイプでじゃないですか?

しかし、リアリティがあろうとなかろうと、かわいそうで、美しくて、たまらない・・・という感情を喚起する映画を求めるのは、大昔も今も変わってないのかもしれません。余命の短い花嫁とか、何年か後に目がさめる花嫁とか・・・私は最近のそういう映画を見る気にならないのは、逆になんでだろう・・・

東山千栄子がおばあさんじゃなくてお母さんだ!このとき56歳だけど映画キャリアはまだ始まったばかりで、それから78歳で引退するまで少なくとも78本、年平均3.5本の映画に出てるというからすごい。 

わが恋せし乙女 [DVD]

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