映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アンリ・ヴェルヌイユ 監督「禁断の木の実」1985本目

ヴェルヌイユ監督の作品は、「地下室のメロディー」「ダンケルク」「ヘッドライト」と見てこれが4本目。この作品が一番古くて1952年、長編デビュー作なのかな。

主役は「フェルナンデル」・・・姓は?と思ったら、これが芸名のコメディアンだったんですね。愛嬌があって笑顔が明るいので、浮気おじさんだけどなんとなく憎まれない感じ。再婚相手は貴族みたいに上品で素敵なんだけど、駅で出会ったお嬢ちゃんの可愛いこと。・・・と思ったら、「ヘッドライト」でジャン・ギャバンと恋に落ちる奔放な女の子をやってた人ですね。うーむ、可愛い。広いおでこ丸出しの、少しだけ巻いたパッツン前髪。無造作にウェーブした短めの髪。これを演じてるフランソワーズ・アルヌールの名前を、石ノ森章太郎が「サイボーグ009」(1964年〜)の003に拝借してたということも知らなかった。同姓同名。この映画が1952年(21歳)、「ヘッドライト」でも1956年(25歳)なので、だいぶ前からのファンだったのかな。1963年に来日して「スター千夜一夜」に出たという情報もあるので、その時に惚れたのかもしれませんが。しかし筋が頭に入らないくらい彼女から目が離せません。ロリータ/ファム・ファタールな展開。滑稽なくらい、45歳の立派な医師フェルナンデルは身を持ち崩していきます。彼をいつまでも子供扱いする老母、真面目で体面を何より重んじる妻。「あなたが体面ばかり重んじるから息子は不幸だった」「家族を捨てるような弱い男に育てたのはあなたです」・・・終盤のこの女二人の会話が最高でした。

すごく、登場人物がそれぞれに芯があってしっかり生きていて、人間ってみんな少しずつばかだなぁ、でもなんか愛しいなぁ、と思える良い映画でした。

禁断の木の実 [DVD]

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