映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ダニス・タノビッチ 監督「鉄くず拾いの物語」1984本目

 「ドキュメンタリーみたいだけど違う。再現映像だ。だから映画としてはよくない」という感想が結構あるみたいですね。この映画が日本で上映されたのが2014年。クリント・イーストウッド監督が、事件の当事者たちに演技をさせた「15時17分、パリ行き」を撮って全世界にメジャー配給したのは今年、2018年です。手法はまさに同じ。公開の順番が逆だったら、この映画を気に入らなかった人は手法についてではなく、別の観点から批評したかも。私はどっちの映画も面白いと思います。実のところ「鉄くず拾い」の方は、地味な映画だなー、なんかオチがないなー、と思うけど、出演者に違和感は全然ないし、リアルな彼らの暮らしを映画という形で覗き見させてもらってありがたいと思います。この映画に違和感を持った人は、映画としてどうというより、ドラマとしての完成度を言いたいのかも、という気がします。

貧富の差もあるし、医療の進歩も地域や時代によって違うので、その時の最低限の医療を受けられないことは、すごく残念だけど仕方なくもある。道義的には、正直なところ、命に関わる事態で他人の保険証を借りることは(やっちゃっていいんじゃない?)と思ってしまうけど、もっとにっちもさっちも行かずに命を落とす人も、世の中にはたくさんいるんだろう。でもさ、車は分解しないで走る状態で売った方が少しは高く売れるんじゃないかと思うんだけど、違うかな・・・。

鉄くず拾いの物語(字幕版)

鉄くず拾いの物語(字幕版)