映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ブノワ・ジャコー 監督「エヴァ」1971本目

怖いもの見たさ。イザベル・ユペールが出てる映画は、つい見てしまいます。ましてや今回、「たかが世界の終わり」で惚れてしまったギャスパー・ウリエルにまた逢えるとなれば・・・。

しかしイザベル・ユペール65歳、いつまで官能的な役どころをやり続けるのか・・・もはや「魔女」の領域に入ってきてますね。高級熟女デリヘルっていうんですかね、なんかほんとすごいです。確かに気になる存在感だけど、若い女の子に備わった、意図せず人を誘い込むような、妖精みたいな魔力がそこまで長く続くわけもなく・・。一方のギャスパー・ウリエルは、そういう若い男の子にしかない、男女問わず触れたくなるような美しさがあふれています。もうしばらく彼は、生まれついた美しさだけで主役を張れるな・・・。顔が美しい人はそこそこいるけど、姿とか立ち居振る舞いも美しい人って意外と少ない。

この映画では(「たかが」でもそうだけど)美しいという以外に特徴も才能もない青年の役がまたぴったりなんだな〜。彼の素敵な恋人も、仕事上の人たちも、結局のところ彼の美しさ以外求めていないのでは・・・。それに気づいていないのは彼自身だけ、という世界。何もない彼と、年齢が老齢である以外、知性もウィットも才能もお金も、何もかも持っている彼女。普通の人(映画を見ているほとんど全ての人)はどっちもソコソコで、突出して愚かでも突出して美しくもないから、珍しいものとしてこの映画を楽しめるんだろうね。

ただ、そういう楽しみを与えるには、ギャスパー・ウリエル演じるベルトランは、まとも過ぎた。もっとチンピラで自堕落で退廃的でないと。

 ちなみに1回300ユーロ(38900円くらい)って「高級娼婦」なの?そこそこ高級な弁護士の時給くらい?知らない人と会ってすぐに寝るのってどんな感じなんだろう。慣れれば知らない人とご飯を食べるくらいの感じなのかな。体を使った仕事って、介護やマッサージ整体の類いとも似た部分があると思う・・・。

同じ原作の映画化が1962年にも行われていて、主演がジャンヌ・モローらしい。そっちも見なければ!(イザベル・ユペールジャンヌ・モローも、肉体に頼って生きるような崩れた感じが全くないけど)ギャスパー・ウリエルは、この先もし崩れていくとしても、味のある演技を開花させていくとしても、見届けたいなと思います。

エヴァ [DVD]

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