映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョージ・フィッツモーリス 監督「マタ・ハリ」1956本目

1931年の作品。伝説的なダンサーであり、第一次大戦中はスパイであったとされているマタ・ハリは何度か映画化されているようですが、これはかの大女優グレタ・ガルボが主演。本物のマタ・ハリインドネシア舞踊ふうのオリジナルの舞を蠱惑的に踊ったけれど、インドネシアとは何の関わりもないオランダ人だったらしいです。残っている写真を見ると、確かにエキゾチックで女神みたいなオーラを感じさせる美しい人ですが、ダンスがうまかったという話も習っていたという話もなく、人の求めるものをすぐに感じ取って与えることのできる、エンターテイナーとしての嗅覚に優れた人だったのかもしれません。

1931年には、マレーネ・ディートリッヒ主演の「間諜X27」(すごく面白かった)も公開されていて、美女スパイブームだったみたいですね!

登場する男性はみんな軍服。マタ・ハリは黒幕的存在のように描かれていますが、実際は枕元で男たちの話を聞き出そうとするくらいの「低級スパイ」でしかなかった、という説もあります。インドネシアに嫁いでいたことがあるだけの彼女が、「インドネシアの巫女」としてパリでバカ売れしたくらい情報流通のない時代なので、「女スパイ」というものにロマンを感じて、そのイメージを膨らませた映画を見たいというのが、当時の一般大衆の感覚だったんだろうなと思います。

前置きが長くなってしまった!内容は、スパイ映画としてのスリリングさがちょっと足りなかったけど、マタ・ハリが逮捕されてからは、ロマンスを大きく膨らませていきました。ただ、彼女が彼にそこまで惚れた成り行きが今ひとつ腹に落ちないまま、どんどんロマンチックになっていったので、一緒に泣くのは無理・・・。面白さと主役の魅力は「間諜X27」が勝ちかな。

せっかくのロマンスなのに、グレタ・ガルボの「可愛さ」があまり出せてないのがちょっと残念でした。

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