映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ケン・ローチ監督「麦の穂をゆらす風」1936本目

2006年の作品。Wikiを見なかったら、きっと監督はアイルランド人だと思っただろうな。イングランドに対抗するアイルランドの人たちを描いていて、結構イングランド軍が悪者だから。でも実は監督はイングランド出身。特定のどこかに肩入れするのでなく、人間を知り、悲しみを共有しようとしているんだと思いました。 

IRAに身を投じる主役のデミアンを演じるキリアン・マーフィ、最近よく見る印象的なクールな表情。透明で青い瞳は、クローズアップ写真を見てみると、本当にうそみたいに澄んでいて、ほぼトパーズですね。割と無表情だから、ますます見る方は勝手に彼の瞳の中に、神のような絶対的な静寂を見ようとしてしまう。

IRAと聞くと、1992年にロンドンの地下鉄で何度もIRAの爆弾予告のため「Evacuation!」のアナウンスで駅の外に出されたことを思い出します。イングランドから見るとアイルランド反乱軍は怖い人たちだったのかもしれないけど、私は両方大好きなので胸が痛みます。若いIRA兵士たちが逃げ込んだ森は、木々の表面に苔が生していて、国立公園みたいだ。訪ねて行って美しいなぁと感激した場所にどういう歴史があったかなんて知らなかった。

内戦とかで、昨日まで仲間だった人たちが憎み合い殺し合うのって、何より一番不幸だ。外からの攻撃が原因となることが多いんだろうか。「自分たち」でなく外の誰かが悪いってはっきりわかれば、気持ちの折り合いがつけやすいけど、世の中ってそんなにシンプルじゃない。

UKがEUから抜けると、北アイルランド地方とアイルランドの間に国境ができてパスポートがないと通れなくなる。たくさん代償を払って、弱い立場の人たちがたくさん我慢して、やっとここまで距離が近づいたのに、また離れていくんだろうかと思うとほんとに切ない・・・。

麦の穂をゆらす風 (字幕版)

麦の穂をゆらす風 (字幕版)