映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アンドレイ・タルコフスキー 監督「ストーカー」1657本目

1979年の作品。
ソビエト的な執念深さに惹かれる。
虚飾のない、鉄骨ばかりのゴツゴツした街とか。人物たちの険しい表情、顔に必ず刻まれている深い皺。
感情を配したカメラとあいまって、ストーリーを見なくても美しい。
ひたすらトロッコ列車で移動するだけの場面とか、長すぎるよね、明らかに。でも、険しい顔の男たちを斜め後ろから見てるだけで、なんか満たされてしまいます。

”ゾーン”の中では、突然のカラー。画面が青っぽくなります。さっきまでの鉄骨の街のように水っぽくはありません。
乾いた谷が、次に通るときは滝になっている。
これハリウッド映画なら、その理由を追求して科学っぽく、あるいは神の啓示という答えが出たらカタルシス!!で、日本映画なら謎の原因が魑魅魍魎ならそれで納得、ロシア的または南米的な世界では、解けない謎の美しさに浸る、マジックリアリズムの世界。ただしロシアは人知を超えた何か(モノリスみたいな)を想定してて、南米はどこまで行っても人間が中心にいる・・・というのが私のイメージ。

ロシア映画ってロマンチックだねぇ。意味を理解するとかしないとかじゃなくて、うっとりとただ眺めていたい、と思うようではもうハマったも同然ってことでしょうか。

「立入禁止区域に忍び込む」といわれると、放射能汚染地域のことを思い出してしまいます。
今は無理でもいつか、本当に十分に時間がたったあとで、チェルノブイリまたは福島に足を踏み入れる人たちが異世界に入り込んでしまうファンタジーとか読めるといいと思う。

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