映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

セシル・B・デミル 監督「チート」1535本目

1915年の作品。サイレント映画です。「イントレランス」より古い!
この映画は、日本人初のハリウッドスター早川雪洲の初の主演作品として日本では映画研究家の間ではよく知られている作品であり、名監督セシル・B・デミルの作品の中でも名作として名高いものです。
もちろん著作権は切れてるけど、時々入る英語字幕だけではわかりづらいので、淀川長治間終盤のDVDをレンタルされることをお勧めします。

早川雪洲はその後、アカデミー作品賞をとった「戦場にかける橋」や日本のドラマにもたくさん出演した成功者ですが、このころは日本からアメリカに渡って大学も卒業できず、かなり浮浪していた時期にハリウッドに見出された出世作です。

早川はメイクが濃い(日本人の顔は薄めだから、映画映えするように濃く塗ったのかな)悪党の役で、ちょいちょい、タタミとか障子とかキモノとか、オリエンタル情緒も盛り込まれます。(cf.ピーター・ローレが日本人ちょい悪探偵を演じた「Mr. Motoシリーズ」など参照)雪洲は白人女性の肌に焼きごてを当てるという悪漢で、国辱映画として彼が弾劾されたのもわからないではないのですが、出演者が全員日本人で、これが歌舞伎の舞台だったとしたら、雪舟は素晴らしい悪役の名スターです。悪くて、かつ、美しい。なんだかんだ悪口を言いながら、アメリカでも女性ファンが多数ついたそうじゃないですか。そんなわけで今となっては、サイレント時代の映画史に残る力作として語り継ぐのがいいと思います。

しかし、今や、人種問題の中で日本人が語られることはないくらい、名誉白人の地位が確立してるのかな、日本人は。(一般社会の中では、まだまだ移民扱いされることも多いけどね)

点数は70点、「7ファクターズ」だと黒新(当時は日本人の悪役スターは珍しいし、今見ても新鮮)かな。

(注)7ファクタータグは以下の7つの指標で映画の特徴を客観的に表現しようとしたもの。 「美」美しさ、「黒」 腹黒さや悪徳、「苦」人生の辛さや哀しさ、 「楽」愉快・楽しい、「情」情感、温かさ、「新」表現、技術、アイデアの斬新さ、「謎」引き込む謎がある