映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

実相寺昭雄 監督「無常」1432本目

1970年の作品。
東京都写真美術館リニューアルのこけら落としで、杉本博司の「ロスト・ヒューマン展」というのをやっていて、その中に、廃墟になった映画館でさまざまな映画を映写して、その間スチルカメラを開けっぱなしで撮影した「劇場」シリーズの連作がありました。ローズマリーの赤ちゃん渚にて、など、一癖も二癖もある“上映作品”の中にこの映画もあって、まだ見てなかったので見ておかなきゃと思ってレンタルしました。

ロスト・ヒューマンという課題にぴったりの、どろどろの近親相姦の映画で、仏の道や人の生き死にとも絡み合って、主人公の姉弟は修羅の道をまっしぐら。でも何だか、中年の私が今の時代に見ると、2時間半もあるし、これでもか、これでもか、と刺激的なシーンが続き、がんばりすぎちゃってる感じがして、昔の中二的映画なのかなぁと思ってしまいました。なんとなく、美術館の暗い館内で、廃墟の映画館の大きな写真を見ながらこの映画のあらすじを読んだときのほうがどきっとした。映画そのものより、杉本博司の作品のほうが私の感覚には訴えたわけなのだけど、その源泉を知るのも大切だなぁと思いました。