1963年の作品。
主人公、女形の大スター「雪之丞」を演じるのが、当時55歳の長谷川一夫なんだけど、美形にはちげぇねぇが女らしさが皆無だ。(←なんか変な影響受けてる)
一人二役で演じる「闇太郎」のほうは、典型的な時代劇の名優らしい、大層な貫禄だ。女形はちょっとゴツくて、あんまり見たくないなぁ。
一方「昼太郎」と名乗って出てくる32歳の市川雷蔵は、見惚れるようないい男。このくらいの美形はたくさんいそうなのに、この色気はなんだ。女スリの山本富士子(雷蔵と同じ32歳)は美しい〜!こまたの切れ上がった、ってのはこういうことかしら。気持ちのいい美しさです。若尾文子は清純なようで思い込みの強い美女。どうしてこの人はこう、スカッと明るい役が回ってこないんでしょうか・・・。
最後までしぶとい悪徳商人を演じるのは中村鴈治郎。善人も悪人も、切れ者もダメ男も、確実な存在感をもたせる名人。雪之丞の正体を知ってから毒をあおるまでの演技の、型を感じさせる立派さ。
他にも、勝新太郎だの船越英二だの、出番が少ないのに豪華な配役。「長谷川一夫300本記念」ということなんですね。
市川崑は「東京オリンピック」でもマイルス・デイヴィスみたいなジャズを使ってたんじゃなかったっけ。この映画も、黒の強い映像や音楽の使い方で、市川崑だなぁと感じる部分が多くありました。