映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ビリー・ワイルダー 監督「シャーロック・ホームズの冒険」1298本目

1970年に作られたアメリカ映画。
ただ、ビリー・ワイルダー監督はベルリンで映画製作に関わるようになった後で、ナチスを逃れてアメリカに亡命したユダヤ人だから、ヨーロッパの映画人と言ってもいいんだと思う。ベルリンのフィルム・ミュージアムに「ビリー・ワイルダーバー」って店が併設されてたりするくらいで。

シャーロック・ホームズの映画化とかテレビ化ってすごくたくさんあるし、カンバーバッチの「シャーロック」以降、それより昔の作品がすっかり色を失ってしまった・・・と思ってたけど、この映画はなかなか魅力的でした。さすがビリー・ワイルダー。このシャーロックはハンチング帽とひじあて付きジャケットのトラディショナルなシャーロックホームズ像だけど、キャラクターはかなりカンバーバッチ・バージョンと類似してます。意外と魅力的で、意外と女性に弱い。マイクロフト兄がなにか重要なことを知っていたり、巨大な組織レベルの秘密に巻き込まれるスケール感があったり。一見地味だけど、謎がめくるめく壮大なドラマに、当時の観客はときめいたんじゃないかなと思います。こういう映画って好き。