映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ヴィム・ヴェンダース監督「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」1280本目

ヴェンダース監督らしい、静謐な美しい映像によるドキュメンタリー。

写真家サルガドの作品世界をたどる映画なので、静止画作品をたくさん使っていて動く絵は少ないのですが、監督自身によるナレーションが全編に流れ、途中、写真とオーバーラップする形でサルガドがしゃべる映像も流れるので、スライドショーのような印象はありません。

なんとなくこの二人の作品世界は似ていますね。透明な目で広い世界を見渡して、どんな小さなものにも美しさを見つける。感受性が繊細すぎて、あまりに多すぎる難民の遺体を目の前にしたときに、その重い美しさに打たれる以上に悲しみに打ちのめされてしまう。そしてサルガドは自然を撮影することにシフトしていきます。

美しい、とただ感じるだけで、自分の中の何かが変わるように思えてしまう。ヴェンダース監督の世界はやっぱり好きだなぁ。