映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

濱口竜介 監督「ハッピーアワー」1256本目

2015年のキネマ旬報ベストテン、日本映画第3位ということで見に行ってきました。
12時50分から19時近くまで、3部構成3900円という大作なのですが、長いとか退屈という感じはあまりありません。4人のアラフォー女性を中心とした人たちの関わりようが、リアルなのに奇想天外で面白くて、先が気になってたまりません。

どんな風に作ったんだろう、この映画は。こんな映画初めてです。
4人それぞれの人間関係や4人のなかの関係が、それぞれの個性に合いすぎていて、これはリアル世界で彼女たちに起こっていることを持ち寄って作り上げたんじゃないか?と思えてきます。
そうでないにしろ、たとえば「鵜飼さん」のワークショップは、インチキっぽいけど人と人が触れ合えばぬくもりや音が通じ合うのは事実で、そこから起こった気づきや戸惑いをそのまま映像に持ち込んでる面白さがある。
朗読は作家役の女の子が実際に書いた小説ですね。(エンドクレジットでわかった)末尾が全部「・・・した」になってるし、出来がよいとは思わないけど、本当に自作だから褒められれば照れる、といったリアリティがある。
それがどんなフィクションより面白い。見応えがある。

もうみんな、嘘っぱちなんか見たくないと思い始めてるから、ドキュメンタリーとも違うこういうフィクションが発生したことが興味深いし、この方法論はこれからどんどん広がって進化していくんじゃないか、という気がします。