映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ガス・ヴァン・サント 監督「永遠の僕たち」1179本目

よかった。
Rotten Tomatoではボロカスだったらしいけど、私の琴線には触れる。
まさかこの、原題のかけらも残ってない邦題は「永遠の0」にちなんだものではないと思いたいけど、優しげな特攻服の天使/死神の意味は、なかなかアメリカ人には理解できないものだと思うんだ。監督はナガサキヒロシマに来たことがあるんだろうか?

ヘンリー・ホッパーくん、すごく良いですね。パパも胡散臭くて素敵だったけど、息子も繊細なのにどこかエネルギー過多な感触があって、とても良い。エキセントリックで感受性の強いミア・ワシコウスカ も、とても素敵。そしてやっぱり、加瀬亮いいですね。あっさりと濃いというか。こんな一見薄い青年が、イングマール・ベルイマン「第七の封印」でいうところの死神の役割を持つのは、連合軍が一般市民を殺戮した戦争で、無為な死を強いられた彼だからこその重大な役割・・・ということが、日本人にならスッと入ってくる。

イーノックとヒロシのやりとりも、イーノックアナベルのやりとりも、初々しくて可愛い。
監督は、こういう透き通った美しさに目ざといですね。

いろいろ差し引いても邦題はどうかと思うけど、じわっときれいな、この先ふとした瞬間に思い出しそうな映画でした。