映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

グザヴィエ・ドラン監督「Mommy」1137本目

「マイ・マザー」と「Mommy」って、タイトル似すぎてませんか?
どれだけ母との確執にさいなまれてるんだ、グザヴィエドラン。

といっても決して、同じような映画ではありません。
「マイ・マザー」のママ役アンヌ・ドルヴァル が、この映画でもママ役なのですが、今度はイケてるママです。ほんとにおしゃれでセクシー。「マイ・マザー」を見た時、イケてない服装の母という設定が面白く、服装だけで気の利かなさが伝わってきて面白い!と思い、じゃあイケてるママは何を着てるんだろう?と思ってたので、答がこれでわかりました。

暴れる息子役は、監督ではなくてアントワン=オリヴィエ・ピロンという若い役者さんです。15歳という設定で、実際そのくらいの年齢なのかもしれないけど、体が大きくて母が押さえつけられるとは思えない、こわさが伝わってきます。年齢的にも監督は15歳を演じるにはもう大人すぎるかもしれないし、大きくて怖い感じは小柄で繊細な彼が醸し出すのは難しいと思う。

少年に大きな影響を与える吃音の女教師を演じているのは、「マイ・マザー」にも出ていたスザンヌ・クレマン。彼女も、趣味のいい、よく似合う服を着た女性として現れます。何かの理由でこの町に越してきた彼女は、教師という常識的な仕事をしてるけど、親子とワインを楽しみ、歌い踊り、彼らにだけは心を開いていきます。

母は結局心を閉じて彼を送り出す。彼は荒れる、そして迎合したように見せておいて、最後に、飛び出す(?)。
ここはやっぱり飛び出さずにいられない。母は隣人に暗に責められて、隠れて崩れ落ちざるを得ない。
ユーモラスに描いていても、重くて結論はない。