映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

グザヴィエ・ドラン 監督「トム・アット・ザ・ファーム」1084本目

カナダのフランス語圏ってイメージ湧きにくいなぁ。
英語圏なら、アメリカにかなり近いイメージで、少し寒くて少し人口が少ないと想像できるけど、モントリオールは都会でボストン、ニューヨークとかにも近い。どんなところで生まれ育つとこういう映画を作るようになるんだろう。フランス語が母語だからフランス映画を見るんだろうか。などなど。

<以下ネタバレあり>

こんどの映画のジャンルは「スリラー」なんでしょうかね。トムの心の中の不安や依存、亡くなったギョームの兄フランシスの精神の乱れ、殻に閉じこもっている母親の孤独。。。そういった心理を、いやらしいほど深堀りしています。唯一まともなのが、サラかな。乱暴されたら抵抗するし「あなた狂ってるわ」と言える。

トムは殴られて脅されて、そういうフランシスに惹かれていき、サラと彼との関係に傷ついてやっと出て行こうとするんだけど、エンドロールのあいだじゅう、(ほんとに行くのかな、行くのかな、)と思っていると、エンドロールの最後に彼が運転しながら、まだ躊躇している表情が映る。彼は結局どう決断したのか?というか、もし無事町に戻り、元の生活に戻ったとして、それでよかったのか?束縛されつつ必要とされる生活への依存を本当に止められるのか?

この監督の知性はすごいよな。自分の中にもある凶暴性や依存性を冷静に観察し、それを利用して映画という形の自分のイメージを構築する。
この映画は、サイコスリラー的なひとつのテーマに絞ってるという点で、彼の総合作品というより「小品」なんじゃないかと思います。あと100本くらいは、小品も大作もお待ちしてます。