映画と人とわたし

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フランク・ボーゼージ監督「武器よさらば」1006本目

1932年作品。
このくらい古い映画だと、白黒でかなり画質が悪い上に女性のメイクがみんな同じで(細眉、ぽってり唇、濃いアイシャドウ)、喋ってもらわなければ女優さんの見分けがつきません。とはいえ主役のヘレン・ヘイズはとても可愛らしい人ですね。相手役のゲイリー・クーパーも、純情な好青年です。以前の婚約者が戦死したの…と言いつつ、その日に新しい彼と恋に落ちてしまうとは…若い人たちってば。

なにしろ78分という短さなので、最小限のストーリー以上のことはあまり語られないけど、最後だけはたっぷりと時間をとって感情の流れを描き切ろうとしています。影絵で童話を見ているような、抽象化された戦場、彼女の横顔の切り絵、美しすぎる幕切れ…悲しい大人の童話という感じですね。出会ってからずっと、ゆっくり二人だけで過ごす時間さえ持てなかった二人の最後のひと時は、最大現に引き延ばされています。キャサリンが彼に会う前にきれいにお化粧をしてもらうあたりから、じわーっと切なくなってきますね。

老人と海」は老人が激しく大魚と格闘する物語で、途中でサメを殺すのをためらう箇所があるとはいっても、作者が平和的な考えなのかどうかわかりませんでした。でもこの映画では、”戦争さえなければ…!”という強い気持ちが伝わってきます。きっと、とてもデリケートなロマンチストだったんだろうな。原作者もこの監督も。