映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

北野武監督「3−4x10月」988本目

凶暴な頃のたけし、というか北野監督の作品。
これを作った人の精神状態は大変なものだな、ということが強く伝わってくる。
この映画のときがピーク、って感じる。
残酷だけど冷酷じゃなくて血が濃い、イタリア人マフィアの映画みたい(要はゴッドファーザーと言いたい)。
愛しすぎて殺す、という。

たけしが組の事務所でマシンガンを撃ちまくる場面の演出は、「セーラー服と機関銃」だな。
<以下ネタバレ>
最後の最後に、トイレの暗闇から出て草野球に戻る場面。
ぜんぶ夢だったと思いたい、幽霊になった彼の妄想、かもしれない。
本当に夢だったのかもしれない。
最後の最後にこの辺をぼかすのが、監督のデリカシーなんだろう。
私も好きなんだ、こういうやり方。つらいつらい、いたいいたい、で終わりたくないけど、空々しいハッピーエンドなんかにするくらいだったら、映画なんか作らなければいい。泣いても騒いでも、生なんて地球の上の一瞬だ。うたかただ。夢だ。…勝手に語ってしまった。

あんなに苦手だと思ってたたけしの映画が、すっかり共感できるものに変わってきてる。継続は力だ。

ところで、まだ若くて名前が漢字の「ふせえり」、なんか全然変わってないなぁ。