映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

溝口健二 監督「赤線地帯」984本目

新宿スワン」と合わせて見るとよし!
映画が作られた1956年は、まさに「売春防止法」が制定された年。(施行は2年後だそうです)でもこの映画のなかでは、何度国会で審議してもまだ制定に至らないようで、置屋の主人が「いろんな噂が飛び交ってるけど、真に受けずに毎日仕事に励むように」なんて女の子たちに説教したりしています。
当時は生活のため、親の借金のカタとして売られてきた人たちがほとんどなので、女衒はいても”スカウトマン”はいません。
みんな着物だし、借金があるから女の子たちはジャラジャラ着飾ることもせず、様子はだいぶ違うみたいだけど、女ばかりのときの不思議な連帯感やパワフルさは、今も昔も全く変わらないようです。

新宿スワン」は男の物語だから、女性たちは商売のタネとして描かれます。だから男たちは「スカウトは女の子たちを幸せにする」「女の子たちは幸せに笑っている(もともと自傷癖があった子以外は)」ことを強調する。この映画は女性たちの生活に寄り添った映画だから、負の面が主に取り上げられます。

法律が成立すれば解放される、という前提で、なかなか成立しない現状を憂いているんだけど、成立後60年近くたっても形を変えて性風俗は残っています。で、借金で首が回らない人は別のところにたくさんいるのね。人間って簡単にはいかない。