映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

トラヴィス・ファイン 監督「チョコレートドーナツ」847本目

(ネタバレです)
アラン・カミングをお母さんって呼びそうになった。体毛が濃くて筋肉質だけど、ルディはキレイな女のひと、だった。ギャレット・ディラハント 演じるポールも、彼女の愛情の強さに惹かれたのに違いない。
そしてマルコが可愛くてたまりません。私はどういうわけか、実話の本人が演じている(つまりハッピーエンド)だと信じて見ていたので、帰り道はくらーくなってしまいました。
(ぜったい、シンプルシモンを後に見るべきだった!)

原題はAny Day Now、バンドのI Shall Be Releasedの中の歌詞なんですね。
いい映画だったし、お涙頂戴って感じの作りではなかったけど、この映画にこの曲を使うのはセンスがもう一歩、という気がします。邦題のチョコレートドーナツは可愛くて良いけど、日本での評価がやけに良いのは、実話がかわいそうな結末だったからじゃないかという気もします。そういうことで映画を評価しないほうが面白い、と思う。それに、この実話があったアメリカで今は同性婚を認める州も多いという事実が、過去のこのケースを「理不尽だ」と感じさせることに寄与してる。

マルコを失った世界はとても冷たくてダメな世界だけど、そこから学んだことのおかげで、今なら多分彼はルディとギャレットのもとで幸せに暮らせるはず。私も、そうやって犠牲を払いつつ前進してきた国のことを知ることができてよかったです。