映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

佐藤肇 監督「吸血鬼ゴケミドロ」773本目

名画座で、この映画をはじめとする、日本の昔のSF映画ばかりのオールナイトをやったという情報を見て、タイトルとポスター写真にたまらなく惹かれました、が、オールナイトで「和製宇宙人まつり」を見る気力も体力もないので、レンタル。

10分たってからやっとタイトル!それまでの間に、飛行機の中の怪しい荷物、ハイジャック犯とのやりとり…そして墜落。一癖も二癖もある乗客たち。

ちょっとイヤらしい感じの中年男性は、誰かと思ったら金子信夫だった。(なかなかの悪役で、金髪美女が最初にやられるという私の期待を裏切って最初の犠牲者となる)彼に限らず男たちのオデコはみんなテカテカしてる。これも昔の映画の特徴なんだよなぁ。
墜落直後、パイロットが乗客に「危ないから外に出ないでください」っていうのはちょっと不思議だな。
拳銃とかライフルとか爆弾とか、持ち込み自由なのも不思議。

飛行機の窓に何羽も取りがぶつかって血が飛び散る冒頭は、ツカミとしてとても印象的だなと思うけど、ハイジャックあり狙撃犯ありUFOあり金髪美人あり、かてて加えてテーマは吸血鬼だ。盛り盛りすぎてもう高度成長期の気の迷いとしかいいようがありません。そして、大人向けなのか全年齢向けなのかよくわからない。政治家と愛人のカラミは中学生のように清潔だけど、人間関係のドロドロは大人の世界です。

ストーリーもむちゃくちゃで、スライム状の宇宙人のようなものに入り込まれた人間と、血を吸われた人間(金子信夫だけ?政治家の愛人も?)を区別する理由も不明。口からスライムが伝染するという設定で十分だったと思うけど、偉い人がどうしても「吸血鬼ってつけないと人が入らないんだよ!」って怒ったりしたのかな〜

最後になってから宇宙人がゴケミドロと名前を名乗ってカミングアウトする(どこでしゃべってる?)理由も、飛行機の中の人たちが生き残った理由もよくわからないし、rest of the worldがどうなってるかも知りたい。予算切れで途中で撮影中止したんじゃないかというくらい、おかしな終わり方です。

ゴニョゴニョしてるスライムの表現とか、額が割れたよくできた人形とか、細かい細工がなかなか絶妙にくすぐられるんだけど、全体的にはいろいろ破綻してるし盛りすぎだしなんとも…というところも愛しい。

ポスターにあまりにも惹かれたので、小さい頃私この映画見たんじゃないかな?と思ったんだけど、おそらく初見でした。(モスラとかヘドラとかは覚えてるし)もしかしたら、小さい頃ポスターを見て、「おとーさんおかーさん私これ見たい!」と暴れたのに、見せてもらえなかったというトラウマが、私をこのDVDのレンタルに向わせたのかもしれません。
とかね。

行方不明のマレーシア航空機が、こんなことになってないといいですね。ないか。